「契約」とは何でしょう?
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「契約」とは法律効果(権利と義務)が生じる約束
さて、改めて”「契約」とはなにか分かりやすく教えて!”と聞かれると、一瞬正しい答えに迷ってしまうところですが、簡単にいいますと「法律効果(権利と義務)が生じる約束のこと」ということだと思います。
なお、ここで法律用語の辞書を用いて確認しておきますと次のように説明されています。
【契約】 相対立する二つ以上の意思表示の合致(合意)によって成立する法律行為。同じく意思表示を要素とする法律行為であっても複数の意思表示からなる点で単独行為と異なり、相対立する意思表示からなる点で合同行為と異なる。広義では、複数の意思表示によって成立する法律行為を広く指し、合同行為も含めていうことがある(例:組合契約、(民法667条))→公法上の契約
(「有斐閣 法律用語辞典 第2版」より)
ということで、なかなか専門家でないとスッとは頭に入ってこないところかもしれませんね。そこで、私なりに、もう少しシンプルに、そして分かりやすい表現で解説しておきたいと思います。
まず、契約には「相対立する二つ以上の意思表示」が必要ということで、下記事例のように約束する当事者間でそれぞれの意思(何を、どの位(数量)、いつまでに(納期・受取日)、いくらで(金額)、等についての条件がクリアできれば買いますよ、売りますよ)を表示し、、結果的に「その条件で買います」、「その条件で売ります」とお互いの意思表示が合致(合意)したことが契約ということになります。
(事例)
契約とはどういうものかいくらかご理解いただいたところで、なぜ契約について学んでおいた方がよいか考えてみたいと思います。
なぜ「契約」について学ぶ?知っておいたほうがいいの?
お互いに約束を守り、揉め事やトラブルが発生しないのであれば、そこまで契約について知らなくてもいいのかもしれません。なぜなら、冒頭に記したように、多くのみなさまは無意識の中で契約をし、なにげないうちに契約を終えているわけですから、何もなければ法律効果(権利と義務)に基き問題解決を模索しなければならないようなことはおきないからです。
しかし、運悪く揉め事やトラブルが生じてしまった場合に、何を根拠に、そして拠り所として約束した相手に対して主張していけばよいのか分からず、泣き寝入りしてしまったり、約束の相手の都合のいいように丸め込まれてしまったり、といったあなたにとって不本意な結果を受け入れてしまうことになりかねないからです。
契約に従い、あなたは相手の義務が果たされていないことを主張できること、それを自らの権利としてもっていることを知り認識しておくことで、あなたやあなたの会社を守る強力な武器となるわけです。
逆に言えば、あなたも義務を果たしておかなければ債務不履行(義務を果たしていない)責任を負いかねないということを理解でき、そのうえであらかじめそこについての対策をしておくことができるようになり、結果的にあなたやあなたの会社にプラスとなる知識となるわけですから契約についての基礎知識は学んでおく方がおすすめといえるのです。
「契約書」はなぜ必要なのでしょう?
契約は、口頭でも成立します。いわゆる「口約束」ですね。法律効果を生じさせるために、書面として「契約書」を作成しなければ契約が成立しないというものではないのです。では、なぜ、わざわざ「契約書」を作成するのでしょうか?
※契約の一部には、法律で契約書の作成が義務付けられているものや契約書(書面)作成が契約の成立要件となっているものもありますのでご注意ください。
【法律で契約書の作成義務があるもの】
例)
- 下請法の適用を受ける下請取引先との業務委託契約書等
- 建設工事請負契約
- 雇用契約書/労働契約書/労働条件通知書
- 労働者派遣契約書
- 保険契約書
- マンション管理委託契約書
- 産業廃棄物処理契約書
- 不動産の売買/交換/賃貸に関する契約書
- 農地の賃貸借契約
- 月賦販売契約(割賦販売法に定める指定商品について)
【法律で契約の成立に契約書作成が必要とされるもの】
例)
- 事業用定期借地権設定契約(”公正証書”限定)
- 定期借地権設定契約
- 定期建物賃貸借契約(※契約期間の定めがあり、その期間更新のないもの)
- 建物の賃貸借契約(※一定期間経過後の取り壊しが決まっているもの)
- 任意後見契約(”公正証書”限定)
なお、”公正証書”とは、法務省の解説の一部を抜粋すると以下のように記されています。より正しく理解するうえでは該当ページをご確認(”公正証書”の文字をクリックまたはタップして)いただければと思います。
「公正証書とは,私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により,公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。」
「契約書」作成の目的とメリット
契約書を作成する目的とメリットして何があるかを知っておくと意味もなく契約書を作成したり製本したりする時の気持ちも違ってきますよね。そこで、ここでは、契約書作成の目的とメリットを整理しておきたいと思います。
契約が一部の例外を除き口頭(口約束)でも成立するということは上で述べたとおりです。
ではなぜ、契約書を作成するのかということですが、以下のような目的とメリットが挙げられます。
<目的&メリット>
- お互いの意思表示を契約書として書面に残すことで契約の有効性担保となる
- 合意した契約の内容(諸条件)を明らかにしておくことで合意の範囲を明らかにでき、契約の範囲を超えた要求がされた場合の主張の根拠書面として活用できる
- 自らが負っている債務(義務)の内容を理解し契約違反とならぬようガイド的なものとして活用できる
- 書面に記録として残すことで、言った言わないの水掛け論となることを未然に防止できる
- 自らの権利内容を書面上で明らかにし残せることで、その権利を行使する際の根拠として相手に指し示すことができる
- 紛争発生時、訴訟時の証拠書面を確保でき、有利な展開が期待できる
私自身は、契約書作成の一番の目的とメリットは、最後に記載した「証拠書面の確保」になると考えています。
だからこそ「契約書を作成」しよう
これまでお伝えしてきた内容から、「契約書」を作成することの意味や目的、そしてその重要性についてご理解いただけたと思います。そこで、さらに「契約書の書き方・作り方」や以下のようないろいろな種類の契約書、さらにはいくつかの契約方式がありますので、そういったことについても今後、情報も整理したうえで、みなさまへお届けしていきたいと思っていますのでしばらくお時間をいただけますと幸いです。
<契約書の種類>
- 秘密保持契約書
- 売買契約書
- 業務委託契約書
- 労働者派遣契約書
- ライセンス契約書
- サービス利用契約書
- システム開発契約書
- 保守契約書
- ほか