企業法務とは何するもの
企業法務に身を置く私にとって、あらためて「企業法務とは何するものですか?」と問われるとちょっと考え込んでしまうところがあります。単純に私自身が私が属する企業の中で何をしているか、どんなミッションを担っているのか、ということを述べるにすぎないのであれば、そう窮することはないのですが、果たして、私が置かれた法務環境が世の中全般の企業法務とほぼ同じといえるのか、逆に異質な存在であるのかによって、答えが変わるように思えたものですから、スッと答えをいえないというコメントになったわけです。
そこで、最初に企業法務が担うべき役割を自らの立場も重ねつつ世の企業法務全般を想定して整理してみたいと思います。
企業法務の職務内容
おそらく多くの企業法務の役割とされているであろう職務内容を列挙してみたいと思います。
①契約書の作成、審査、交渉支援
②契約書の押印手続き、原本管理、契約管理(有効期間や契約更新の管理)
①は多くの企業で法務の職務であろうと思いますが、契約内容がFixした後のケアについては、企業によっては法務でなく、総務や経理が担うところもあるようです。
③社内のコンプライアンス行政
・コンプライアンス教育
・情報セキュリティ関連法令(個人情報保護法、不正アクセス禁止法、不正競争防止法、迷惑メール防止法、など)
・ビジネス関連法令の動向ウォッチ&対応
④法務全般の相談対応
営業部門、技術部門、スタッフ部門とあらゆる部門からの法律全般にかかわる相談から、事業活動にかかわる幅広い相談が飛び込んできます。相談者もどこに相談したらよいかというときに声をかけてくることが多いように感じます。よろず相談もお引き受けしてます、みたいな感じです。
⑤紛争相談、支援、対応(訴訟対応、ホットライン対応を含む)
取引が順調に行っている間はこの手の相談はほぼないのですが、納期遅延や対価関連などの問題が発生しますと、相談が舞い込みます。できるだけ紛争になる前から予防策を講じておくように社員教育をされておかれた方が紛争時の主張材料集めが容易になりますし、優位な証拠を確保できるように思います。
⑥輸出入管理
⑦労務相談・対応
多くの企業においては、人事部門が担う領域でしょう。問題の内容によっては法務部門と人事部門とが連携し対応にあたることもあるようです。
⑧知的財産権関連の支援・対応
一定規模の企業であれば、ほとんどが知的財産部門(通称、知財部門)が設けられていますので知財部門が担うことになる領域となります。中小事業者の場合は、法務部門や総務部門が役割を担うことも多そうです。
仮に知財部門が配置されている企業であっても、契約に基づく知財紛争もあることから、知財部門と法務部門が連携・協力しことにあたることもあります。
⑨株主総会準備・運営
企業によっては、経理部門の担当としている企業もあります。
⑩税法対応
こちらも経理部門が担当している企業の方が多いように思います。
企業法務の守備範囲は広い
上述のとおり、企業法務の職務内容として主要なものを挙げてみましたがいかがでしょうか。
以外とやるべきことは多く、しかもいずれも企業経営にとってとても重要な役割を担っていることがお分かりになることでしょう。これらの職務内容を遂行していくために押さえておかなければならない法律もそれなりにあるところです。
そこで、次に、企業法務に携わるうえで概要程度でも押さえておくべき法律に何があるのか、目を向けてみましょう。
企業法務とつながりの深い法律(おさえるべき法律を知ろう)
・民法
・商法
・会社法
・民事訴訟法
・刑法
・独占禁止法
・下請代金支払遅延等防止法(下請法)
・輸出管理法、外為法
・著作権法
・特許法
・商標法
・意匠法
・不正競争防止法
・個人情報保護法
・労働者派遣法
・労働法
・印紙税法
など
それぞれの法律条文だけでもかなりのボリュームがあり、すべての知識を完璧に習得することは大変なところがありますので、法律によっては、大事なポイントに絞って理解し、なんとなくでも懸念を感じられる程度に感度をあげることができれば、実務対応は可能になってくるものと考えています。
しいて、優先度の高いものとしては、
◎民法
◎商法
◎会社法
◎刑法
◎独占禁止法
◎下請代金支払遅延等防止法(下請法)
◎著作権法
◎不正競走防止法
◎個人情報保護法
となるように思います。
ただし、これは企業の事業領域や起業特性によっても変わり得るところだと思いますので、その点はご留意いただきたいと思います。
当然ながら法令改正も入ったりしてきますので、ある程度定期的に法律の学びなおし、再確認をする機会はつくっておかれた方がより質の高い企業法務の実務を実践できることにつながると思います。
まとめ
企業法務の職務内容は多岐にわたり、企業防衛に欠かせない重要な役割を担っている。
企業法務に必須の契約法務に欠かせない民法の知識をまずはしっかりと身につけるべし。